主要研究項目

1. DNA合成酵素阻害活性を有する食品素材の含量分析と機能性食品の開発(産学連携研究)
 含硫黄糖脂質 [Sulfo-Quinovosyl-Diacyl-Glycerol (SQDG) および Sulfo-Quinovosyl-Monoacyl-Glycerol (SQMG)] は緑黄色野菜や海藻、ウニなどに存在している。私たちは本物質はDNAポリメラーゼを阻害し、抗がん活性を示すことを見いだした。そこで、主に野菜などの植物食品素材に含まれるSQDGとその関連糖脂質群の含量や新しい生理活性・機能を解析して、抗癌活性作用のある機能性食品開発を目指す。
○緑黄色野菜の含硫黄糖脂質(SQDG)の含量分析およびSQDGを構成する脂肪酸の分析
○緑黄色野菜に含まれる糖脂質の定性・定量方法の開発と分析
○CO2超臨界抽出法を用いた緑黄色野菜から糖脂質画分のスケールアップ精製方法の検討
○がん予防および抗癌活性機能性食品開発へ向けた動物実験

2. 食品素材からのDNA代謝系酵素阻害物質の探索と健康食品・化粧品・医薬品へ向けた応用(産学連携研究)
 DNA代謝系酵素を選択的に阻害する物質について、食品素材をはじめとする天然材料から探している。またこれらの酵素の阻害物質は、抗癌剤・抗炎症剤をはじめとする医薬品の開発につながると考えられる。
○DNAポリメラーゼ群・HIV逆転写酵素・DNAトポイソメラーゼ・テロメラーゼ・RNAポリメラーゼ・ヌクレアーゼ活性阻害物質の探索、単離、精製と化学構造の決定
○見いだした物質のヒト癌細胞に対する増殖抑制試験とアポトーシス誘導試験、担癌マウスを使った抗腫瘍活性試験
○見いだした物質のマウス耳を使った抗炎症活性試験

3.食品加工工程で生じる副産物(廃棄物)から機能性食品・化粧品・医薬品の開発(産学連携研究)
 食品メーカーから食品加工工程で生じる副産物(廃棄物)の有効利用を目的として、その副産物(廃棄物)の各種活性測定を実施、活性本体の精製と同定を実施する。産学連携研究として行う。
○食品加工廃棄物からDNAポリメラーゼ群・HIV逆転写酵素・DNAトポイソメラーゼ・テロメラーゼ・RNAポリメラーゼ・ヌクレアーゼ活性阻害物質の探索、単離・精製と化学構造の決定
○見いだした物質のヒト癌細胞に対する毒性試験とアポトーシス誘導試験、担癌マウスを使った抗腫瘍活性試験
○見いだした物質のマウス耳を使った抗炎症活性試験
○見いだした物質の抗酸化活性試験

4.食品添加物(天然食品成分)の新規生理機能(健康機能性)の開発
 食品添加物(天然食品成分)のDNA代謝系酵素阻害活性を調査する。これらの酵素を阻害活性が見いだせれば、抗癌・抗炎症など新規生理機能の発見につながると考えられる。また、その生理活性を有する食品添加物をリードとして各種誘導体を有機化学合成して、活性の評価による構造活性相関を考察、より有効な化合物のデザインを行う。
○食品添加物のDNAポリメラーゼ群・HIV逆転写酵素・DNAトポイソメラーゼ・テロメラーゼ・RNAポリメラーゼ・ヌクレアーゼなど各種DNA代謝系酵素阻害活性の調査
○食品添加物のヒト癌細胞に対する増殖抑制試験、細胞周期解析とアポトーシス誘導試験、担癌マウスを使った抗腫瘍活性試験
○食品添加物のマウス耳を使った抗炎症活性試験

5. DNA合成酵素分子種選択的阻害物質を用いたケミカルノックアウト解析
 本研究室では、DNA合成酵素であるDNAポリメラーゼ(pol)を選択的に阻害する物質を天然材料から探している。哺乳動物のpolは、ゲノム解析の進歩によりα〜μの14種類以上が現在のところ知られており、私たちの研究室は多くのpol研究者の協力により、ほとんどの分子種を準備することに成功した。これだけのpol分子種を揃えている所は世界中で当研究室以外にない。何故これだけ多種類のpolが存在しているのか、各分子種の機能や生体内での役割についてなど、polについて不明な点がたくさんある。pol分子種の選択的阻害剤は、「遺伝子ノックアウト法」に代わる解析の手法「ケミカル・ノックアウト法」として用いることにより、上述の解明が期待できる。また本酵素の阻害物質は癌細胞の増殖を抑制することが期待される。
○DNAポリメラーゼ群のうち分子種選択的阻害物質の探索、単離、精製と化学構造の決定
○pol分子種選択的阻害物質を分子プローブとして使用しての癌細胞への影響調査