研究内容

血栓症の予防を目指して

 生活習慣病予防の基本は、適切な食事の摂取や規則的な運動の実施などです。生理学研究室では、血栓に関する基礎的研究や実用化に向けた研究を、他の研究施設や医療施設と共同して行っています。具体的なテーマは以下のとおりです。

A.血栓の形成・溶解機序の解明

B.動脈硬化
C.抗血栓性作用をもつ野菜や果物などの食物(食材)の探索
D.食物の抗酸化能とその機能
E.抗血栓性薬剤の評価と作用機序の解明
F.運動の血栓形成傾向への影響
G.健常者および血栓性疾患患者(特に脳卒中患者の血栓形成傾向測定)

これらの研究を行うため、血栓を血管内につくるin vivo 血栓モデルおよび生体外の種々の装置内につくるin vitroモデルが用いられます。in vivo モデルにおいては、実験動物の血管をヘリウム−ネオン (He‐Ne) レーザーで照射して血管内に血栓をつくり、血栓形成と溶解の機序を研究します。in vitroモデルにおいては、「ずり応力」と呼ばれる血液の流れによって血栓をつくり、血栓形成と溶解の機序が研究されます。この研究ではヘモスタトメーター (Haemostatometer) や、最近完成されたベッドサイドで使用可能な簡便型ずり惹起血栓症測定装置グローバル血栓症測定装置 (Global Thrombosis Test ;以下GTT) が用いられます。GTT は脳卒中や心筋梗塞をはじめ、様々な血栓性疾患の予防と治療に大きな力を発揮するものと期待されています。

 血栓は血液、血管壁、血流の3者の相互作用で形成されます(ウィルヒョウの3つ組み、Virchow's Triad)。これらの3要素の機能を測定するため、一般的な生化学的方法は勿論のこと、血流速度、血管内皮機能、血小板反応性が測定されます。微小血管内の血流速度の測定には顕微鏡レーザードップラー法、血管内皮機能測定には体外に切り出した血管リングを使用する血管弛緩能測定法と反応性充血法、また、血小板反応性の測定にはヘモスタトメーター とGTT が用いられます。共焦点レーザー顕微鏡は、血栓形成・溶解の細胞、あるいは分子レベルでの機序解明に大きな力を発揮するものと期待されています。

 生活習慣病予防は大きな社会的課題になっていますが、血栓性疾患予防が可能な食材の探索や、身体運動が血栓形成と溶解に及ぼす影響に関する基礎的研究、種々の条件下における健常者や血栓性疾患患者の血栓形成傾向測定などの臨床研究も、病院(12)との共同で行われています。成果の一部は健康野菜果物として社会へ還元されています(JA兵庫六甲西営農センター)。私たちは、血栓性疾患の予防に役立つ情報の発信を目指して研究しています。

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